資産構築・運用・管理

為替ヘッジとは?ありなしの違いをわかりやすく図解&シミュレーション!

つみたてNISAやiDeCoで外国の株式や債券を運用するファンドを購入しようと思っている。
為替ヘッジありかなしかを選ぶことになるんだけど、そもそも為替ヘッジの意味がわからない。。。

今回はこんな疑問について、証券アナリスト・FP1級の資格を持つ私が、図解やシミュレーションも取り入れてわかりやすく解説していきます。

為替ヘッジが「あり」か「なし」かで、メリット・デメリットはあります。

しかし、もし私が投資するのであれば為替ヘッジ「なし」を選びますかね。

なぜなら、円安になれば大きく儲けることができるからです。

全財産を海外のファンドに投じているわけではなく、”リスクマネー”としてアップサイドを狙いたいのであれば、ですけどね。

逆に、円高になれば損が出で投資元本を減らすことになります。

「”元本割れ”なんてとんでもない!」っていう気持ちももわかりますけどね。

為替ヘッジとは?

為替ヘッジとは何か。

まず結論をお伝えします。

為替ヘッジとは、現時点で将来の為替を予約して確定させて、為替変動のリスクを避ける方法です。

これだけで「わかった!」と納得できれば、この先を読み進めていただかなくて大丈夫です。(^^)

でも、

はぁ?なんのこっちゃ?

って感じる人が多いと思います。

そこで、今回は具体例を取り上げながら初心者でもわかりやすいように解説していきます。

為替とは?

そもそも為替とは、異なる国の通貨と交換する取引レートのことです。

例えば、日本の円と米国のドルの為替レートは、1ドル=100円とか言ったりしますよね。

そして、為替レートは一定ということはなく、常に動いていきます。

例えば今、手元に100万円あるとします。

1ドル=100円の時に米国ドルに換えると、10,000ドルになりますよね。

これをそのまま3か月後に日本円に戻すときに、為替レートは変動していて、そのレートによって手元に戻ってくる日本円は変わってきます。

例えばこんな具合に。

  • 1ドル=110円(円安)▶110万円(10,000ドル×110円)
  • 1ドル=90円(円高)  ▶90万円(10,000ドル×90円)

もともと手元にあったのは100万円ですから、為替の変動によって儲かったり損したりします。

このように変動することを「リスク」と言います。

損することが「リスク」じゃありません。

為替ヘッジをする意味は?

将来の為替レートは、誰にもわかりません。

急激に円高が進んで大損ぶっこいてしまう可能性だってあります。

となると、将来の為替の変動リスクを避けたいって思うのが人情。

そんなときに用いられる手法として「為替ヘッジ」があります。

「ヘッジ」は避けるという意味です。

では、為替が変動するリスクをどのように“ヘッジ(避ける)”するのか?

それは、将来の為替レートを現時点で決めてしまう(固めてしまう)ことでできます。

先程お伝えした「為替ヘッジ」の定義をもう一度確認してみてください。

為替ヘッジとは、現時点で将来の為替を予約して確定させて、為替変動のリスクを避ける方法

どうでしょう。

先ほどよりは理解が深まったでしょうか。

では、ここまでで得た知識をベースにもう少し深堀りしていきましょう。

為替ヘッジが「あり」か「なし」かを考えるのは、例えばあなたがつみたてNISAやiDeCoなどで海外の投資信託を購入するときですよね。

ここからは、次のようなことをカバーして行きます。

  • 為替ヘッジにおける将来の為替レードは、どうやって決まるのか
  • 為替ヘッジ「あり」と為替ヘッジ「なし」でどう変わるのかをシミュレーション

為替ヘッジでの将来の為替レートの決まり方

先ほど為替ヘッジのやり方は、現時点で将来の為替を確定させておくとお伝えしました。

将来の為替を確定させることは、「為替予約を行う」と言ったりします。

それでは、為替予約のレートはどのように決まるのでしょうか。

結論を先にお伝えすると、将来の為替レートは2通貨間の金利差によって決まります。

シンプルな具体例で説明しますね。

  • 現在の為替レート1米ドル=100円
  • 円金利:1%(年率)
  • 米金利:3%(年率)

このときに、為替予約をします。

手元にある100万円は、1年後に101万円に増えています。

一方、現時点の100万円は、10,000米ドルと同じ価値を持っています。

1年後には、10,300米ドルに増えています。

このように、交換する2通貨に金利差がある場合、金利が高い通貨で運用していた方が得になるので、現在の為替レートで1年後に交換する約束をしていたのでは、有利・不利が生まれます。

そこで、101万円と10,300米ドルが等しくなるように為替レートを決めればよいことになります。

つまり、101万円÷10,300米ドル=約98円で為替予約すれば有利・不利がなくなります。

現在の1米ドル=100円と、予約した1米ドル約98円の差となる約2円分が、為替ヘッジコストです。

為替ヘッジありとなしの違いをシミュレーションしてみた

為替ヘッジありの場合となしの場合を比べてみたのが以下のチャートです。

①~④のケースを以下の前提で具体的にシミュレーションしてみます。

手元資金100万円
現在の為替レート1米ドル=100円
10,000米ドルと同じ価値
運用利回り5%

為替ヘッジ「なし」で円高になった場合

手元の100万円は、1米ドル=100円だと10,000米ドルです。

これを5%で運用すると、1年後は10,500米ドルになります。

1年後の直物レートが円高(1米ドル=80円)になっていた場合、受け取る日本円は以下のようになります。

10,500米ドル ✕ 80円/米ドル = 84万円・・・16万円の損失

為替ヘッジをしていなかったので、円高の影響をもろに受けてしまいました。

為替ヘッジ「あり」で円高になった場合

手元の100万円は、1米ドル=100円だと10,000米ドルです。

米ドルを購入した時点で為替予約をします。

金利差が1%とすると、1年後に1米ドル=99円で為替予約することなります。

さて、10,000ドルを5%で運用すると、1年後は10,500米ドルになります。

1年後の直物為替レートが円高(1米ドル=80円)の場合、受け取る日本円は以下のようになります。

10,500米ドル ✕ 99円/米ドル = 104万円・・・4万円の利益

もし、為替ヘッジをしていなければ、円高の影響をもろに受け損失を被ってしまうところでしたが、為替ヘッジのおかげで予め為替レートを確定させていたので、円高の影響を回避できました。

5%の運用で為替ヘッジのコストを上回ることができたので、結果的に利益を出すことができました。

為替ヘッジ「なし」で「円安」になった場合

手元の100万円は、1米ドル=100円だと10,000米ドルです。

これを5%で運用すると、1年後は10,500米ドルになります。

1年後の直物レートが円安(1米ドル=120円)になっていた場合、受け取る日本円は以下のようになります。

10,500米ドル ✕ 120円/米ドル = 126万円・・・26万円の利益

為替ヘッジをしていなかったので、円安の恩恵を受けることができました。

為替ヘッジ「あり」で「円安」になった場合

手元の100万円は、1米ドル=100円だと10,000米ドルです。

米ドルを購入した時点で為替予約をします。

金利差が1%とすると、1年後に1米ドル=99円で為替予約することなります。

さて、10,000ドルを5%で運用すると、1年後は10,500米ドルになります。

1年後の直物レートが円安(1米ドル=120円)の場合、受け取る日本円は以下のようになります。

10,500米ドル ✕ 99円/米ドル = 104万円・・・4万円の利益

為替ヘッジをしていたので、円安の恩恵をうけることができませんでした。

まとめ

今回は為替ヘッジとは何かというところから話し始めました。

繰り返しになりますが、「為替ヘッジとは、現時点で将来の為替を予約して確定させて、為替変動のリスクを避ける方法」でしたね。

為替予約したレートを決定するのは、2通貨間の金利差でした。

為替ヘッジありなしの影響をシミュレーションすると、

  1. 為替ヘッジ「なし」で円高になった場合
  2. 為替ヘッジ「あり」で円高になった場合
  3. 為替ヘッジ「なし」で円安になった場合
  4. 為替ヘッジ「あり」で円安になった場合

という4つのパターンがあることがわかりました。

 

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