・住宅ローンで変動金利と固定金利ではどちらの割合が多いんだろう・・・
・どうして変動金利の方が固定金利よりも金利が低く設定されているんだろう・・・
・結局、変動金利と固定金利で自分はどっちを選べばいんだろう・・・
今回はこんな疑問をわかりやすく解説しスッキリクリアにしていきたいと思います。
変動金利とは?
変動金利型の住宅ローンは、返済期間中に適用金利が変動するタイプのローンです。
金利見直しの期間は半年ごとで、金利が上がれば金利負担が増え、逆に金利が下がれば金利負担が減ります。
一般的には、6か月ごとに返済額が変わるわけではなく、毎月の返済額は一定です(元利均等返済の場合)
返済額は、利息部分と元本部分で構成され、金利の変動によって、利息部分が変動し、それに伴って元本部分も変わります。
試しに毎月の返済額が10万円とし、この返済額とその内訳である利息部分と元本部分のシミュレーションをしてみましょう。
- 借入当初、利息部分が4万円→元本部分は6万円(10万円-4万円)
- 半年後に金利が上昇し、利息部分が5万円→元本部分は5万円(10万円-5万円)
- 1年後にさらに金利が上昇し、利息部分が6万円→元本部分は4万円(10万円-6万円)
となったとします。
これを表で表すとこうなります。
時期 | 返済額 | 利息部分 | 元本部分 |
当初 | 10万円 | 4万円 | 6万円 |
半年後 | 10万円 | 5万円 | 5万円 |
1年後 | 10万円 | 6万円 | 4万円 |
元利均等返済の場合、金利が変動しても毎月の返済額は5年間変わらないというルールがあります。(5年ルール)
また、返済額の見直しのタイミングでどんなに金利が上昇していても、新たな返済額は、無制限に上がることはなく、従来の返済額の125%を超えない、というルールがあります。(125%ルール)
今回の例だと、10万円の125%である12万5千円を超えないということです。
この理由は、返済額が急上昇して家計の負担が激増することを防ぐ(激変を緩和する)ことを目的としています。
これは住宅ローンを組んでいる側からするとありがたく思えますよね。
でも、だからと言ってその分返済額をおまけしてもらえるのかというと、そんなことはなく、5年後の返済額見直し時まで問題が先送りされるだけです。
結局、そのツケは自分で払うことになります。
固定金利とは?
固定金利型の住宅ローンは、適用金利が固定化されるタイプのローンです。
固定金利の期間中であれば、世の中の金利水準がどれだけ上昇しても、金利は見直されないため当初設定した金利が適用されます。
金利を固定化する場合は、全期間の金利を固定化するかを選択するか、3年、5年、10年といった一定期間のみ金利を固定化するかということになります。
例えば、当初10年間金利を固定化した住宅ローンを組んでその際の適用金利を1%とします。
もし5年後に世の中の金利が当初よりも大幅に上昇していたら住宅ローンにかかる適用金利はどうなるでしょうか。
答えは1%のまま。
返済額も変わりません。
なぜなら、10年間金利を固定化すると約束をしているからですね。
では、当初設定した固定金利の期間が終了したらどうなるでしょうか。
この場合は、次の金利タイプを選択することになりますが、原則として変動金利型に変わります。
商品によっては、同様の固定期間選択型や全期間固定金利型を選択できる場合もありますが、銀行によって金利タイプの選択肢や優遇率が限定的になる場合がありますので、よく確認しましょう。
変動金利と固定金利はどちらの割合が多い?
では実際に、住宅ローンを組む人は、固定金利と変動金利のどちらを選択しているのでしょうか。
実際には住宅ローンを組む人の内、半分以上の割合で変動金利を選択しています。
出典:国土交通省住宅局「民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」よりRobust-Life作成
これにはいくつかの理由があります。
まず、借入時点においては、変動金利の方が固定金利よりも適用金利が低めに設定されているということがあります。
変動金利には、金利が変動するというリスクが存在しますが、同じ借入額・同じ借入期間から返済額を算出した場合に当初設定される金利が低ければ返済額を抑えられることになります。
例えば、借入金額3,000万円を35年ローンで組むとします。
固定金利が3%、変動金利が1%だとすると、返済額は、
- 固定の場合だと115千円
- 変動の場合だと85千円
と月々3万円もの開きが出てきます。年間だと36万円にも。
こうなると、「金利はこれまでも低いし、これからも上がらないだろう」と考え、「将来のことはわからないけど、変動金利を選べば(少なくとも借入時においては)固定金利よりも得だ」という判断が働きます。
また、物件購入時にかかわる不動産会社の営業マンも変動金利をすすめてきます。
なぜならば、金利が低い方が借入可能額は多くなり、より高い物件に手が届くようなるからです。
不動産会社にとっては、お客さんにより高い物件を購入してもらった方が、手数料を多く取れるので少しでも高い物件を勧める動機が生まれます。
不動産会社の営業マンにとっては、住宅の購入者のその後の住宅ローンの返済状況など関心などありません。
購入時に仲介の手数料を貰えばいいだけなのですから。
固定金利より変動金利の方が金利が低い理由と損得の判断
そもそも、なぜ変動金利の方が固定金利よりも金利が低く設定されているのでしょうか。
それには、金利が変動するリスクを負っているのが誰なのかを考えてみましょう。
固定金利の場合、金利変動のリスクを負うのは銀行です。
(銀行によっては金利スワップによりリスクヘッジを行いますが、ごく一部です。)
住宅ローンを組む際、例えば固定金利で3%と設定とした後に世の中の金利が5%とか10%とかに上がっても、借り手は当初設定した3%の金利だけを支払えばいいのです。
銀行にしてみれば、最初に金利を固定してしまったが故に、3%の金利しか受取れないというリスクがあります。
だから銀行は、ある程度金利が上昇しても利益が確保できるようにバッファーを見るため、固定金利の方が変動金利よりも金利を高めに設定するのです。
変動金利の場合、金利変動のリスクを負うのはローンの借り手(=あなた)です。
住宅ローンを組む際、例えば変動金利で1%と設定しても、将来世の中の金利が上がれば、それに応じてあなたの金利負担も増えていきます。
将来金利が上昇したら、銀行はそのリスクを単にあなたに転嫁すればいいだけです。
だから、変動金利の方が固定金利よりも金利を安く設定できるのです。
「変動金利と固定金利でどちらが得か」なんてことは、住宅ローンの契約時にはわからず、住宅ローンを完済してみなければわかりません。
35年後にローンを完済したときに初めて、
「(たまたま)低金利が続いたから、変動金利を選んでおいて良かったな。」(^o^)
「変動金利で借りたけど、その後金利がもの凄く上昇したから、固定金利を選ぶべきだったな」(T_T)
と実感できるのです。
当初にできることは、借りた後の何十年単位で続く金利動向についての“予想”です。
でも、一体誰が35年間の金利動向を正確に予想できる人などいるでしょうか。
そんな人はいません。
予測すること自体、博打であり、投機・スペキュレーションと言ってもいいでしょう。
金利の世界はケセラセラです。
「“投機”なんてしない」と言っている人が、変動金利で住宅ローンを組んでいると聞くと、「おいおい・・・」と私は思わず心のなかでツッコミを入れたくなります(笑)
変動金利で借りてもいいのはこんな人
それでも、「当初の設定金利が低いから変動金利を選びたい!」という気持ちもわかります。
私は全部が全部、変動金利が悪だと言っているのではありません。
変動金利で借りてもいいと思う人はこんな人です。
- 住宅ローンの借入額が少ない人
- 返済期間が短い人
- 自己資金に余裕のある人
- 将来の借り換えを前提にしている人
支払利息は、住宅ローン残高☓金利で計算されます。
もともとの借入額が少なければ、多少金利が上昇しても、支払利息が増加する影響は少ないからです。
例えば、短期間に借入金利が1%から2%へと上がった場合、ローン残高が1,000万円ほどなら、毎月の支払利息の増加分は8千円程度で済みますが、ローン残高が4,000万円ほどあれば、支払利息は3万円以上増えることになります。
また返済期間が短ければ、金利が低いうちにローン元本の償還が進めることができ、金利が上昇しても逃げ切れる可能性があります。
これに当てはまらない、ローンの借入残高が多く35年とかの長期で借りている人は、目先の金利の低さに囚われることなく、固定金利を選びましょう。
「変動で借りておいて金利動向を常々チェックして、金利上昇の兆しが見えたら固定にすればいい」とかいう人が時々いたりしますが、あまり現実的ではないと私は思います。
よっぽど厳格に自分で決めていないとズルズルといく可能性がありますし、第一時間も手間もかかり面倒くさいですよね。
固定金利を選ぶと、総返済額が大きくなる可能性がありますが、返済額変わることはありません。
安定した返済計画が立てられるし、金利上昇を心配することもなく、実際に金利上昇しても放ったらかしでOKです。
まとめ:変動金利と固定金利の比較
これまでの話を踏まえ、変動金利と固定金利と固定金利のメリット・デメリットついてまとめてみました。
変動金利のメリット・デメリット
メリット
- 固定金利よりも金利が低めに設定されている
- 今後金利が上昇しなければ、低金利を享受できる
デメリット
- 将来金利が上昇するリスクがある
- 金利が上昇すれば返済額も上昇し、返済が苦しくなる
固定金利のメリット・デメリット
メリット
- 金利が固定されている安心感がある
- 返済額が変わらないので収支計画が立てやすい
デメリット
- 変動金利より金利が高めに設定されている
- 今後低金利で推移すれば変動金利より返済額は多めになる
私の結論は「住宅ローンの借入額が少なく返済期間が短期間でなければ、固定金利を選びましょう」というものです。
固定金利か変動金利か迷っている方の参考になれば幸いです。
この記事へのコメントはありません。