日本の銀行預金は、金利が低すぎてお金が増やせない・・・
海外だと金利が高いみたいだし、外貨投資ってどうなんだろう?
こんな疑問について、初心者向けに答えていきいます。
これまで「分散投資」として、「資産の分散」について語ってきましたが、「地域(通貨)の分散」に話を移します。
最後まで読んでもらえれば、為替についての基礎知識と、外貨投資で儲けることの意味・計算方法についてシミュレーション付きで解説していますので、スッキリとわかるようになります。
例えば、円高だから「損した」と考えるのはなぜ短絡的なのか、といったようなこともわかりますよ。
この記事は、証券アナリストと1級ファイナンシャルプランニング技能士の資格を有し、運用会社でアナリスト業務の実務経験がある私が書きました。
分散投資における「地域(通貨)の分散」とは?
分散投資には以下の3つの分散があります。
- 資産の分散
- 地域(通貨)の分散
- 時間(タイミング)の分散
今回は、地域(通貨)の分散についての話です。
投資の分散効果は、国内の資産だけでなく、海外の資産を持つことによっても可能、との考え方があります。
日本国内だけですと、通貨は日本円ですが、海外だとそれぞれの国・地域の通貨があります。
外貨投資を行うためには、異なる通貨の交換(売買)比率、つまり「(外国)為替」の知識が必要になってきますが、この基礎知識がないまま、外貨投資に手を出してしまうと、ナニワ金融道に出てくる”泥沼さん”級にヤバいです。
あっ、私の身内にも「スケベ根性」を出して大損をぶっこいた人物がおりますが・・・(爆)
なお、「資産の分散」については、以下の記事を併せてお読みください。
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では話を進めていきます。
円高・円安のおさらい
初心者向けの超基礎なので、これも一応おさらいしておきます。
例えば、1ドル100円が1ドル110円になるのは、円高でしょうか、それとも円安でしょうか。
もちろん、答えは「円安」です。
100円出せば1ドルが買えたのに、110円出さないと1ドルが買えなくなってしまったからです。
「円の価値」が下がったから「円安」です。
逆に、1ドル100円が1ドル90円になるのは、「円高」ですね。
100円出さないと1ドルが買えなかったのに、90円出させば1ドルが買えるようになったからです。
「円の価値」が上がったから「円高」です。
TTS・中値・TTB・スプレッド
手持ちの円を外貨に換えたり、逆に外貨を円に戻したりするとき、TTS、仲値(TTM)、TTBというのを見たり聞いたりすることがあると思います。
まず仲値は、午前9:55のレートです。
各銀行がそれぞれ発表しますから、銀行によって仲値は微妙に違っています。
銀行の仲値が決まると、顧客との交換レートであるTTSとTTBが表示されます。
- TTS(Telegraphic Transfer Selling Price):円から外貨に替えるときのレート
- TTB(Telegraphic Transfer buying Price):外貨から円に替えるときのレート
例えば、仲値で1ドル100円だとします。
そうすると、TTSは101円、TTBは99円といったようになります。
TTMとのそれぞれの差である1円は、銀行の手数料。
TTSとTTSの差のことをスプレッドと言います。
ここまでの説明を踏まえて、具体的にシミュレーションしてみましょう。
TTS・TTBと為替変動による損益シミュレーション
まず、金利を一切考慮せず為替だけでシミュレーションします。
現時点の銀行の仲値が1ドル=100円だとします。
あなたが銀行で手持ちの日本円を1ドル(外貨)に替える場合、適用される為替レートは、仲値ではなくTTSです。①
あなたは、101円を払って1ドルを買いました。
1年後、あなたはその1ドルを握りしめ、円に戻そうと再び銀行に行きました。
手持ちの1ドルを日本円に替える際に適用される為替レートは、仲値ではなくTTBです。②
為替は常に動いているので、1年後の為替レートは分かりません。
1年後の仲値が同じ場合
仮に1年後の仲値が、たまたま1年前と同じ1ドル=100円の場合、戻ってくる円はTTBを適用するので99円です。
仲値は100円で同じでも、101円を払ってドルを購入し、1年後にその1ドルを売って円を買い戻したら99円にしかならなかったので、2円損したことになります。③
1年後が円安の場合
1年後の為替が円安になった場合はどうでしょう。
仲値が1ドル=100円から102円になりました。
ただ、TTS(101円)でドルを買って、TTB(101円)でドルを売っていますから、儲けは0円です。
1年後が円高の場合
次に、1年後の為替が円高になった場合です。
今度は仲値が1ドル=100円から98円になりました。
この場合は、TTS(101円)でドルを買って、TTB(97円)でドルを売っていますから、儲けはマイナス4円です。
以上から、為替損益の計算方法は、TTB-TTSとなります。
為替で儲けるための2つの要素とは?
(外国)為替というと、なんだか難しそうですが、つまるところ話は超単純です。
「安く買って、高く売る」ことがほぼすべてです。
なるべく安く買い、なるべく高く売る。これで利益(儲け)が出ます。
魚屋さんがまぐろとかさんまを安く買って(仕入れて)、高く売ろうとする。
これと全く同じです。
米国ドルを安く買って、高くなった時に売ると、儲けが出ます。
為替で儲けを出すための要素は、「安く買って、高く売る」がメインですが他にもあります。
それは、「スプレッドを極力小さくする」ということです。
スプレッドは、TTS-TTBで計算したもので、銀行の手数料に相当するものです。
シミュレーションでは、スプレッドは2円となっていました。
でも、もしスプレッドが2円ではなく、1円だったらどうでしょう。
これをシミュレーションしたものがこちらです。
スプレッドが小さくなった分、損失の減少、儲けの増加につながっていることが確認できます。
外貨投資でよくある勘違い
ここまでは「為替」だけについて話してきましたが、ここからは「金利」も考慮して話を展開していきます。
例えば・・・
という人がいますけど、これは外貨投資でよくある勘違いです。
金利で儲かった分は、為替で損しても大丈夫なんです。
ここでお伝えしたことは、
外貨投資の損益は、為替損益と金利の合計で考える
ということです。
為替と金利を考慮した損益シミュレーション
先ほどは為替だけを考えましたが(点線より上)、今度は金利も考慮して損益をシミュレーションします。(点線より下)
今、ドル金利が5%だとします。
1ドルを銀行に預けておくと、1年後の利息は0.05ドルです。
1年後の仲値が同じ場合
1年後の仲値が、1年前と同じ1ドル=100円の場合、TTBは99円となり、利息の0.05ドルは4.95円です。④
外貨投資(預金)の損益は、為替と金利の合計で考えるとう話をしましたね。
損益の合計
= 為替の損益 + (円換算)金利
= マイナス2円 + 4.95円
= 2.95円 (⑤)
で利益率は2.92%です。(⑤/①)
1年後が円安の場合
1年後の為替が円安になった場合はどうでしょう。
仲値が1ドル=100円から102円になりました。
ただ、TTS(101円)でドルを買って、TTB(101円)でドルを売っていますから、為替の損益は0円です。③
しかし、利息が円換算で5.05円がつきますから(④)、合計の損益は5.05円(⑤)で利益率は5%です。
1年後が円高の場合
次に、1年後の為替が円高になった場合です。
今度は仲値が1ドル=100円から98円になりました。
この場合は、TTS(101円)でドルを買って、TTB(97円)でドルを売っていますから、儲けはマイナス4円です。③
しかし、利息が円換算で4.85円つきますから(④)、合計の損益は0.85円(⑤)で利益率は、0.84%です。
まとめ
分散投資としての「地域(通貨)の分散」を考える上で必要な「為替の知識」を超基礎的な部分を話しました。
円高円安のおさらいからは始まって、TTS・仲値・TTBの話、そこから外貨投資で儲ける大きな要素をお伝えしました。
外貨投資で儲ける要素は、
- 安く買って、高く売る
- スプレッドの大きさ
でした。
そして、外貨投資の損益は為替だけではなく、為替損益+金利で考えるんでしたね。
教科書的な説明を字面だけを追うとわかった気になりますが、「結局、どうすりゃいいんだ?」ってなりがちではないですか。
この記事では、段階的にシミュレーションを示しました。これにより理解がより深まり、「こういう順番で手を動かしていけばいいのか!」という気付きがあれば幸いです。
ではまた。