具体的にどういうことなんだろう・・・
今回はこんな疑問について解説していきます。
ネットを眺めていると、確定拠出年金には節税効果があるとか社会保険料の削減効果があるといったことが書かれています。
ただ、仕組みや具体的な計算が示されていないと、実際にどのくらい効果があるのか実感が湧きませんよね。
そこで今回、シミュレーションしてみることにしました。
他人の人生を生きるのではなく、自分の人生のオーナーになるべく、
- サラリーマンとしての給与を上げる
- 複業(副業)などでキャッシュポイント持つ
など、稼ぐ・攻めるというマインドはとても大切です。
しかし、たとえサラリーマンであっても、税金や社会保険料など出ていくお金を削減できないか、という守りのマインドも大切です。
そうすれば、手元のお金は増え、よりロバストな人生に近づけると私は信じています。
確定拠出年金を掛金(積立金)で社会保険料が削減できる仕組み
毎月受け取る給料の明細を眺めると、給料から次のものが差し引かれていることがわかります。
- 税金(所得税や住民税)
- 社会保険料(健康保険料・年金保険料・介護保険料など)
そして、
給料-(税金+社会保険料)で計算されるのが可処分所得です。
手元に残るお金(可処分所得)を増やすには、
- 給料を増やす
- 節税して税金を払い過ぎない
- 社会保険料を削減する
のいずれかの方法ですね。
このうち、今回取り上げるのは社会保険料の削減です。
と思いませんでしたか。
いえいえ。
確定拠出年金(企業型)の掛金(積立金)によって、社会保険料を削減することは可能です。
確定拠出年金(企業型)に加入した場合と加入していない場合の違い
イメージとして、こちらのチャートをご覧ください。
まず、確定拠出年金(企業型)(棒グラフの左側)に「加入なし」の場合、月額報酬そのものをベースに社会保険料は計算されます。
一方、確定拠出年金(企業型)(棒グラフの右側)に「加入あり」の場合は、掛金は給料に算入しません。
その分月額報酬が減り、減額された報酬月額をベースに社会保険料は計算されます。
掛金を給料に算入しないということは、当然にこちらの方が社会保険料は低くなります。
これが、「確定供出年金の掛金で社会保険料が削減される」仕組みです。
社会保険料が削減できれば、給料-(税金+社会保険料)で計算される手元に残るお金(可処分所得)は増えることになりますよね。
ちなみに、社会保険料は「標準報酬月額✕保険料率」で計算されます。
って疑問が湧いてきませんか。
これと似たものとして、報酬月額というものあります。
社会保険を理解する上では、知っておくべき知識なのでこの際整理しておきましょう。
社会保険の基礎知識:給料・報酬月額・標準報酬月額とは
まず、報酬月額とは一定期間の給料(報酬額)の平均額のことです。
たとえば、4月から6月の3ヶ月の給料(報酬額)が、それぞれ30万円、31万円、32万円だとします。
そうすると、報酬月額は31万円になります。
ちなみに、給料(報酬額)には、次のものが含まれます。
- 基本給
- 歩合給
- 役職手当
- 勤務地手当
- 日直手当
- 家族手当
- 休職手当
- 住宅手当
- 別居手当
- 通勤交通費
- 残業代 など
ボーナス(賞与)は、年3回以下の支給であれば報酬月額の対象にはなりません。
報酬月額を保険料額表に当てはめたものを「標準報酬月額」といいます。
社会保険の保険料額表はこんなものです。
出典:協会けんぽ(全国健康保険協会)
つまるところ、報酬月額に基づいて標準報酬月額が決まり、標準報酬月額に基づいて保険料が決まるということです。
ここまで言葉で説明してきましたが、具体的な事例があった方がよりわかりやすいですよね。
そこで、以降ではシミュレーションしていきますね。
シミュレーション:確定拠出年金の掛金で社会保険料は削減できるか
ここから確定拠出年金(企業型)に加入していない場合と加入している場合で、社会保険料にどう違いが出るのかをシミュレーションしていきます。
以下の前提を置きました。
- 対象:サラリーマンのAさん(東京都)
- 年齢:40代
- 月収(報酬月額):400千円(40万円)
また、
健康保険の料率:11.63%
厚生年金保険の料率:18.3%
で計算します。
確定拠出年金(企業型)に加入していない場合
報酬月額400千円は、2019年度の協会けんぽが公表している保険料額表によると、395千円~425千円の範囲にあります。
ここから左にある欄を見ると410千円とあり、これが標準報酬月額です。
なので、Aさんが負担する保険料は以下の通りです。
- 健康保険料:23,841.5円 (410千円✕11.63%÷2)
- 厚生年金保険料:37,515円 (410千円✕18.3%÷2)
- 社会保険料合計:61,356.5円
保険料は、折半額の数字を拾います。
なぜなら、全額保険料の半分を会社が負担してくれているからです。(労使折半)
またAさんの健康保険料は、介護保険第2号被保険者の数字を拾います。
なぜなら、Aさんは40歳以上64歳以下に該当する介護保険第2号被保険者だからです。
さて、改めて眺めてみると、毎月約61千円もの社会保険料を支払っていることがわかります。
1年間(12ヶ月)で負担する736千円ですから、負担感が大きいですよね。
確定拠出年金(企業型)に加入している場合
次にAさんが毎月10千円(1万円)を確定拠出年金の掛金とし積み立てた場合を考えてみます。
掛金10千円は給料に報酬月額に参入しないのですから、報酬月額は400千円→390千円となります。
先ほどと同じく協会けんぽの保険料額表で確認すると、370千円~395千円の範囲にあります。
ここから、標準報酬月額は380千円だとわかります。
この場合、Aさんが負担する保険料は以下の通りです。
- 健康保険料:22,097円 (380千円✕11.63%÷2)
- 厚生年金保険料:34,770円 (380千円✕18.3%÷2)
- 社会保険料合計:56,867円
同様に折半額の数字を拾い、かつ健康保険料は、介護保険第2号被保険者の数字を拾います。
このケースでは、Aさんは毎月約57千円の社会保険料支払っていることがわかります。
つまり1年間(12ヶ月)で負担する社会保険料は682千円です。
確定拠出年金(企業型)に加入していない場合の、年間社会保保険料は736千円だったので、年間で54千円の社会保険料を削減できたということになります。
削減できた社会保険料をどう見る?
先程のシミュレーションでは年間54千円の社会保険料を削減することができました。
これは取るに足らない金額でしょうか。
私はこの金額を大きいとみます。
なぜなら、運用でこれほどの儲けを出すのは投資の素人にとってなかなか難しいと思うからです。
高いリターンを狙える個別株やアクティブ型の投資信託など購入すれば可能かもしれませんが、それらは価格変動があり(=リスクがあり)、元本割れの可能性もあります。
元本確保型の商品だと、定期預金とかがありますが金利は0.1%がせいぜいです。
仮にこの定期預金で年間54千円の利息を付けたい場合は、5,400万円の元本が必要になります。
(単純化のため税金を考慮しませんでしたが、実際には付いた利息に20.315%の税金がかかります。)
まとめ
今回は、確定拠出年金(企業型)の掛金を支払うことにより社会保険料が削減できるということを、シミュレーションして確かめました。
シミュレーションでは、月々1万円の掛金(積立額)でしたが掛金を増やすこともできます。
上限は以下の通りです。
- 他の企業年金がある場合: 月額2万7500円
- 他の企業年金がない場合: 月額5万5000円
掛金を増やせばそれだで、社会保険料が削減できるというメリットがあるのです。
ただ、このメリットには副作用があります。
それは、給付も減るということです。
- 健康保険給付の減額:出産手当金と傷病手当金
- 雇用保険(失業保険)給付の減額
- 老齢厚生年金給付の減額
ただ、こういったデメリットに対し、今のところ私はこんなふうに思います。
- 厚生年金は賦課年金で将来いづれかの時点で減額されそう
- 一方、確定拠出年金は積立方式でいわば自分年金
- だから確定拠出年金を優先させた方がいいかも
ご参考になれば幸いです。
この記事へのコメントはありません。